ダイダンでは、質の高い医療を提供するための最適な環境の構築に取り組んでいます。再生医療分野では、製品の研究開発から製造、そして患者へ投与するそれぞれの場面に適したクリーン環境(施設)が求められます。しかし当初の設備計画と運用実態の不一致から、作業者へ負担がかかったり施設の改修コストが増加してしまい、産業化の促進を阻む一因となっています。
私たちはグループ会社のセラボヘルスケアサービス株式会社(セラボHS社)が2023年度に開始した細胞製剤の製造受託サービスを通じて、施設運用のための多くの知見を得てまいりました。ダイダンが持つ確かな施工力にこの施設運用ノウハウを新たに融合することで、治療を提供する側と受ける側の双方に最大限のメリットをもたらす最適な設備と運用支援サービスを提供してまいります。
SDGs SDGsの実現に向けて
国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の趣旨に賛同し、ダイダンでは、ESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮したさまざまな企業活動に取り組むことで、SDGsの達成に取り組んでいきます。
HIGH QUALITY MEDICAL CARE 高品質な医療環境の実現 ~設備と運用の最適化~
用途に合わせた小規模クリーン環境の構築 〜提案力の強化と効率化〜
高度な医療を提供する過程では、医療機関の他に製造所や研究機関などでも用途に合わせたクリーン環境が求められます。いずれの施設も運用のイメージが明確でないまま設備を構築した場合、実際に運用を開始してから不備が生じ、結果として利用者にとって負担の大きい設備となることが少なくありません。特に小規模クリーン環境では、限られたスペースに生産機器や什器類を配置する必要があるため、それらの運用を十分に理解したうえで設備を計画することが重要となります。
グループ会社のセラボHS社では、ダイダンの施工ノウハウを踏襲したクリーン環境の施工部門と細胞製剤の製造受託サービス部門を設けています。施工と運用のプロフェッショナルがお客さまの抱えるさまざまな課題に対応し、設備と運用のバランスを最適化したプランを迅速にご提案しています。
新たな技術やサービス、検証などが必要な場合は技術研究所と連携して効率的に解決を図り、グループ一丸となってお客さまのご要望にお応えします。
機器販売事業から細胞培養受託事業への橋渡し 〜お客さまへの継続的な伴走支援〜
小規模クリーン環境を対象にした開発製品開発後期(オールインワンCPユニット®他)の2023年度の受注は34台(前年比240%)となり、堅調に実績を伸ばしています。
ダイダングループではこの機器販売でつながりをもったお客さまの事業フェーズに合わせ、継続的な伴走支援をしてまいります。
細胞製剤の開発初期からお客さまに寄り添うことで、将来的に大規模製造へ移行する際に、細胞培養受託や大型製造施設の施工へつなげてまいります。大型製造施設の計画では、セラボHS社の施設運用で得た知見を活かし、製造効率に配慮した提案をいたします。
セラボ羽田の開設 〜藤田学園との連携〜
2023年10月に、「藤田医科大学東京先端医療研究センター※1」(東京都大田区)4階の産学協同エリアに「セラボ羽田」の名称で医療施設向けコンパクトCPF※2を開設しました。この施設では、細胞操作を行うためのコンパクトなクリーン環境を実現する細胞培養加工ユニット「オールインワンCPユニット®」を導入しています。ショールームも兼ねているため、実際に藤田医科大学様が細胞操作などの運用を実施している様子を見学窓からご覧いただくことができます。
「セラボ羽田」開設により、医療施設で活用している状況を多くの皆さまにご見学いただくことで、再生医療関連施設や研究施設へ容易にクリーン環境を構築できることをアピールしています。
- ※1: 藤田医科大学東京先端医療研究センター学校法人藤田学園が羽田空港に隣接する商業施設Hi-Cityに開設した最先端の医療や周辺機器研究を行う施設。当社の再生医療事業拠点の「セラボ殿町」(神奈川県川崎市殿町)の多摩川対岸に位置しています
- ※2: CPF細胞培養加工施設(Cell Processing Facility)のこと
2023年度見学実績 |
---|
67件 |
- (セラボ羽田、セラボ殿町、その他再生医療関連施設の合計数)
細胞培養受託事業の拡大 〜市場の開拓と持続的な成長〜
2023年度より、セラボHS社が運用する製造所「セラボ殿町」において細胞製剤の製造受託サービスを開始しています。受託品は、ガイアバイオメディシン社が開発した難治性希少疾患向けがん免疫製品「GAIA-102」の治験薬となります。
本事業の拡大を目指し、川崎市殿町地区の細胞培養受託拠点を増設しました。細胞加工技術をお客さまへ広くアピールすることで、治験薬の他、再生医療で広がる自由診療用細胞や研究用途などの特殊な細胞の製造案件を獲得することを目指します。
CONTRIBUTION カーボンニュートラルへの貢献
地球温暖化にともなう気候変動問題は、私たち一人ひとりにとって避けることのできない喫緊の課題です。日本では2050年カーボンニュートラル実現を目指し、さまざまな分野で温室効果ガスの削減に向けた取り組みが推進されています。中でも、建築物は一度建ててしまうと、将来にわたってCO2を排出し続けることから、省エネルギーな建物であるZEB(Net Zero Energy Building)を普及させることが特に重要になります。
ダイダンは、自社ビルのZEB化を通じて建物の脱炭素に関する技術や運用ノウハウを蓄積してまいりました。これからも、高い省エネルギー性能と快適な室内環境を両立した建物をお客さまに提供し続けることで、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
新たな働き方を推進する次世代オフィスビル 新潟支店が竣工
これまでの自社ビルのZEB化に続き、2024年3月に新潟支店の建て替えが完了しました。「3つの脱(脱カーボン・脱ルーチン・脱ストレス)とレジリエンス(災害への対応力)をDXにより実現」をコンセプトに掲げ、カーボンニュートラルや働き方改革といった社会課題に対応した、新たな働き方を推進する次世代オフィスビルです。
外部からの熱負荷を低減するため、矩形・RC造のシンプルな建築形状としたほか、執務室の外周に打合せエリアや書庫など外からの熱の緩衝空間を設け断熱性能を高めています。また、空調/照明ともにタスク・アンビエント方式※1を採用し、省エネルギーでも快適な室内環境としています。また、当社開発品である「リモビス( REMOVIS®)」と」とAIを活用した電力マネジメントシステムも導入しました。建物の電力使用量を予測し、使用量に対する段階制御を設けることでデマンドレスポンス※2への対応も行っています。こうした取り組みにより、新潟支店では基準となる一般的なオフィスビルのエネルギー消費量に対して80%削減となり、「Nearly ZEB」を達成しています。
工事段階においても、建設現場の生産性向上(省力化・省人化)に向けて、BIMをはじめとするDXツールを活用し、施工管理業務の効率化を図りました。また、建築現場と離れた場所にあるオフサイト加工施設にて事前に配管類の加工を行う等先進的な取り組みも行っています。これらの取り組みにより、多岐にわたる関係者との円滑な情報共有や遠隔での施工管理支援、手戻り作業の削減などを実現しました。
今後もダイダンは、建物の省エネルギー化を通じて温室効果ガスの排出を抑制し、働く人々の快適性や健康性に配慮した時代が求める空間価値を提供してまいります。
-
※1
タスク・アンビエント方式:従来の全体空調(照明)を担うアンビエントと、個々が操作可能なタスクの両方を導入する方式。
タスクで個々の快適性を補えるため、アンビエント設備の省エネ化が図れる - ※2 デマンドレスポンス:電力の需給量を供給量に合わせる手法。地域レベルの電力需給量が一定以上乖離すると、地域一帯の電力品質の低下や停電など重大な影響をもたらす
クラウドやIoTを活用したカーボンニュートラル技術提案の推進
ダイダンは、時代とともに変化する建物の監視制御への要求に対して、クラウドやIoTを活用したDXソリューションとして監視制御システム「リモビス」を開発し提供しています。建築物や工場の脱炭素化に対して、リモビスは、エネルギー計測からデータ分析、カーボンニュートラルにつながる改修提案までをワンストップで実施するサービスとなります。
建築物や工場のカーボンニュートラル化を進めるにあたり、現状のエネルギーの使用状況を正確かつ詳細に計測し、適切な対策を講じることの重要性が再認識されています。多くの建物では、中央監視装置が導入されエネルギー使用量等が計測記録されていますが、計測ポイントが少なく詳細な検討ができないケースが大半を占めており、安価に計測ポイントを追加したいという客先ニーズへの対応が課題となっていました。そこで、リモビスへ簡易に計測データを取り込む仕組みを構築し、エネルギー使用の計測をサブスクリプションサービス方式により安価に提供するようにしました。このサービスを利用することで、リアルタイムでエネルギー使用状況の監視が行えるとともに、計測データの分析から改修提案まで効率的に行えるようになります。
ZEB普及拡大への貢献
政府のエネルギー基本計画では、2030年までに新築建築物において、2050年までにストック平均でZEB基準の省エネ性能を確保することを目指しています。本年2月に公表された国土技術政策総合研究所の調査報告によると、2022年度に新築された建築物でZEB基準の省エネ性能を有した建築物は20%弱にとどまっており、さらなるZEB普及拡大に向けた取り組みが求められています。
ダイダンは、自社ビルのZEB化を進め、自社ビルで得られたZEBに関する知見を学協会活動などを通じ、広く情報発信を行っています。その一例として、ダイダン四国支店は、経済産業省四国経済産業局のホームページや公式動画サイトなどで省エネ優良事例として紹介されています。また、ZEBに関する豊富な経験と知識をもとに、ZEBプランナーとしてお客さまが建物を新築する際のZEB化のサポートや、既存建築物のZEB化改修提案を積極的に行っています。社内においては、2030年のZEB基準の省エネ性能を見越した、設計技術力向上のための勉強会などを推進しています。
ZEBリーディング・オーナーとして
ZEBを実現した先進的な建物のオーナーである「ZEBリーディング・オーナー」に登録され、お客さまにZEB建物を見学・体験していただくなど情報発信し、ZEB普及に貢献しています
- 導入実績
- ZEB建物保有件数 5件
ZEBプランナーとして
「ZEBプランナー」に登録されており、お客さまへZEB化の提案・プランニング、設計施工および運用などのコンサルティングを行っています
- プランニング実績
- ZEB 12件